インタビュー

PROJECT ~続編の成り立ち~
「レオンの地獄めぐりみたいな話にしたい」(神谷)

監督神谷誠&脚本菅正太郎 対談インタビュー(by渡辺水央)

神谷
前作 『バイオハザード ディジェネレーション』が公開された2008年の年末に、プロデューサー陣から続編をやれないかという話をされたんですよ。脚本も同じく菅さんということだったので、ぜひ、と。僕はカッコイイ言い方をすると現状に満足しないタイプで、次はこうしたいって常に思ってるほうなので、続編を作るならやりたいこと り、痛めつけられなかったりっていうのがあったので、今回はレオンが酷い目に遭う話にしたいな、と。レオンの地獄めぐりみたいな話にしたいというのは、最初のプロットの打ち合わせの頃からしてましたよね。
監督がとにかくレオンを汚れさせたい、いじめたいということだったので(笑)、コンセプトははっきりしてたんですよ。それだったらレオンを主人公に、彼が地獄のなかに入っていって出てくるまでの話にしよう、と。途中でコンセプトが揺らぐこともなく、ラストもほぼ最初から決まっていたので、始まりから終わりまでの筋の流れ自体に苦労した記憶はないんですよ。ただ、なかはめちゃくちゃ変わっていて、よりどう映画的に見せていくかということで、苦労しましたね(笑)。

SCENE~東欧という舞台~
「バイオらしい、ゴシックホラーの趣もある街」(神谷)

神谷
前作の舞台がアメリカで、空港や研究所を描いていたので、今回は本来の『バイオバザード』らしい、もうちょっと雰囲気のある街にしたいなというのがあったんですよね。あと前作のキャンペーンのときに、主題歌を歌われてる土屋アンナさんが、あいさつで「怖い映画じゃないから女性も楽しめますよ」って言われてたんですよ。もちろんそれはいい意味で言ってくださったんですが、そう言われてしまうのも癪なので、ゴシックホラーの趣も前回より加味したいな、と(笑)。
東欧は本当に行ったことがないうえに、まるで詳しくなかったので、とにかく僕はGoogle散歩で行けるところは行きまくりましたね(笑)。監督から旧市街の古い建物と新しいビルが混在してるようなところと言われて、どういう街なんだろう、と。あと歴史もわからないといけないから、今、東欧で起こっていることをいろいろ調べて、共通する問題を見つけて、〈東スラブ共和国〉っていう架空の国を作っていったんですよね。
神谷
台本が上がって絵コンテに入る前に、東欧にロケハンに行ったんですよ。菅さんに書いていただいた脚本上の場所が本当に成立するのか、実際の場所を見ながら考えたいというのもあって。冒頭のCIAとレオンが会う場所も、台本では市場って設定だったんですよね。それでロケハンをしたら、魅力的な場所ではあるけれど、画として成立しづらい。そこで市場の地下駐車場っていうひねった設定になって(笑)。ただ、実際に市場の地下は駐車場になっていて、ああいう場所があるんですよ。それを見て使えるな、と。あと地下道も実際にウクライナにあるものなんですよね。
シェルターも実際にあるんですか?
神谷
それは資料だけなんですが、潜水艦の秘密基地を参考にしてますね。あと旧ソ連時代のミサイルのサイロ(格納庫)も資料で調べて。ロケハンで実際の場所を見てイメージをつかんだことは、かなり役に立ちました。

CHARACTER~新たなキャラクター~
「レオンとエイダの一瞬の出会いをやりたかった」(神谷)

最初のプロットの段階から、メインのキャラクターはほぼ揃ってましたよね。今回はバディムービーにしたいというのもあったので、相手役もそのまま名前をバディにして。
神谷
それよりもっと前に、レオンとエイダのラブストーリーにしたいって僕が言ってた時期もあるんですよ。エイダが敵地にいるって知ったレオンが、国の制止を振り切って助けに行くんだけれど、出会える瞬間はほんの一瞬しかないっていう。一瞬の出会いっていうのは、今の形でも残ってるんですけどね。
エイダは今後のゲームの展開もあるので、どう登場させて絡ませいくかは、結構考えましたよね。最初はアメリカでエイダが倉庫にリッカーの死体を置いて、わざわざ監視カメラに映ることでレオンを東欧におびき寄せるってっいうオープニングも考えていて。
神谷
結構、後々まで残ってましたよね。それがレオンへの招待状だっていう。
JDはいいキャラになりましたよね。
神谷
エンドタイトルが出るときに、どのキャラクターも長い本名が出るんですけど、JDはひとりだけふた文字で、あえて本名を作ってないんですよね。アメリカかぶれっていうことで、なんとなくそれっぽくJD。あと、JDは他のキャラクターと違って声優もモーションキャプチャーのアクターも同じ人なので、ふた文字の名前の下にひとりのキャスト名しかないから、JDだけコンパクト(笑)。JDはキャプチャーをやった俳優さんのキャラクターが強烈だったので、声もお願いしたんですよ。
そうだったんですね(笑)。JDみたいなキャラクターのヤツは出したいねっていう話は、かなり早い段階からしてましたよね。
神谷
ジョーカーっぽい人間がいないと、面白くない。前作で言えばグレッグみたいな。
バカでいいヤツで、わかりやすいキャラクターですよね。それだけに情が湧く。
神谷
今、作業中ですけど、JDの最期の場面は自分でもグッと入ってしまいますね。

CREATURE~リッカーの登場~
「リッカー使いがいても全然おかしくない」(菅)

B.O.W.が実戦配備されているというのは、今回初。そのなかでも「パギャー」(ガナードの頭が割れて触手が出る)はやりたいというのがありましたよね。
神谷
お約束ですからね(笑)。あとは今回の新設定ということで言うと、リッカーたちを操る“リッカー使い”は最初から決めていて。
ゲームで見てもわかるんですが、じつはB.O.W.やプラーガのような寄生体に取りつかれた人間たちの間には主従関係があるんですよね。その延長線上で言えば、リッカー使いというものがいても全然おかしくない。
神谷
リッカーは前作に登場してないのでフルCG映画としては今回初めてでしたが、人間の動きとはやっぱり違うので、そこは非常に苦労しました。リッカーの動きも、キャプチャーでアクションチームの人たちにやってもらってるんですよ。「四つん這いでものすごく素早く走ってください」ってお願いしたりして、あれは苛酷だったんじゃないかな(笑)。
あの動きをやってもらってるんですか?
神谷
午前中にそれやると、午後は腕の筋肉がプルプルしちゃって、動けませんみたいな(笑)。それをアレンジしてますね。
タイラントが今回すごいカッコよかったですね。すげぇデカイな! と(笑)。
神谷
デカくしちゃいましたね。あれは菅さんが戦車とぶつかるって書いた時点で、大きくせざるを得なくなって(笑)。本当はあれはBMP-3っていう車体で、正確に言うといわゆる戦車ではないんですけどね。
タイラントとの戦いに関してはいろいろ案を出したんですけど、この戦い方じゃ駄目だってずっと監督に言われ続けまして……。
神谷
どういう決め技でタイラントを倒すのか、お題を投げるだけ投げて(笑)。
前作の研究所と一緒ですね。普通の人間ではタイラントは倒せないんですよ。ゲームでも、ロケットランチャーでようやく倒れるわけですから(笑)。最後の飛行機のくだりは決めてたんですけど、燃やしてみたり、閉じ込めてみたりしても、なかなか死んでくれなくて。ようやく倒すことができました(笑)。

THEME~責任を背負って生きていく~
「レオン自身が自分の戦いの歴史と対峙する」(菅)

アフレコのディレクションにしても、極力アニメっぽさ排除されてましたよね。
神谷
アメリカの音響監督もそこはわかってくれていて、あまりに日本のアニメ的な息遣いに対しては、「too anime!(アニメ的過ぎる)」って言ってましたね(笑)。正直、それがいいことなのか悪いことなのかはわからないんですが、僕はCGであることはそんなに意識してなくて、基本的には映画を撮るつもりでやってるんですよ。
そこは僕も感覚として同じですね。
神谷
そのなかで今回はレオンもバディもある責任を背負って生きていくという話になってるんですが、基本的には僕は主人公が皆のために死んだり、死んだらすべてが許されるっていうのは好きじゃないんですよ。自己犠牲で死ぬくらいだったら、生きて責任取るべきで、目の前の人間をちゃんと看取る責任もある。そういう話も最初からしてましたね。
そうでしたね。認め合った相手に対して、レオンが銃を向けられるのかどうか。最初は敵だとしか思っていなかったのが、JDやバディたちが戦っているシチュエーションに感情移入せざるを得なくなっていく。そのうえでレオン自身、『バイオハザード2』からの戦いの歴史と対峙することになるっていう。
神谷
ある時期まで、イリーナっていうバディの婚約者のキャラクターがいて、そのイリーナを撃つのはバディだった。道中で気を許して、いいヤツだってなったJDをレオンが撃ち、バディは自分の婚約者を自らの手で撃つっていう。
お互いそうやって大切な存在を撃った者同士が銃を突きつけ合うことになって。レオンが精神的にも苛酷な状況に置かれていくっていうのは脚本の完成版でも同じで、そういう意味でも地獄めぐりなんですよね。